外来化学療法中に出現する副作用の中で、よく出現するものがこの手足症候群です。乾燥などの経度なものから、爪や指先のひび割れ、皮膚が薄くなったような感覚など、その人によって症状は違いますが、処置の基本は「保湿と保護」です!!
何気なく生活しているだけでも、水を使うだけでもふやけたり、油分が逃げてしまったり、そのため乾燥したりと刺激がたくさんあります。化学療法によって、敏感になっているお肌を労わってあげましょう。
刺激の少ないクリームやオイルを使用して保湿、日常的に綿の手袋を着用して保護をして生活をしましょう。
📌 看護師監修 📌 最終更新:2026年3月
もくじ
- 手足症候群とはどんな状態?
- 重症度のちがいと症状の変化
- どのお薬で起こりやすい?
- なぜ手足だけに起こるの?
- 対処法と予防ケア
- こんな症状が出たらすぐ受診を
- まとめ
① 手足症候群とはどんな状態?
「手足症候群(てあししょうこうぐん)」とは、がんの治療に使うお薬の影響で、手のひらや足の裏が赤くなったり、水ぶくれができたり、痛くなったりする副作用のことです。英語では「Hand-Foot Syndrome(ハンド・フット・シンドローム)」、略して「HFS」とも呼ばれます。
症状がひどくなると、歩いたり物をつかんだりするだけでも痛くて、毎日の生活がとても大変になります。だからこそ、早めに気づいて、早めに対処することがとても大切なのです。
主な症状
症状は主に、手のひらや足の裏など「よく使う場所・体重がかかる場所」に出やすいです。靴を履いて歩くとき、物をつかむときに使う部分ほど影響を受けやすいのが特徴です。
🔴 赤み・熱感・むくみ 最初に現れるサインです。お風呂のあとや歩いたあとに悪化しやすいです。
💧 水ぶくれ・ひび割れ 症状が進むと皮膚がむけて、激しい痛みを伴うことがあります。
🖤 黒ずみ・色素沈着 回復する過程で、皮膚が黒ずんで残ることがあります。
🤚 手指のしびれ・感覚のにぶさ スイッチを切るタイプのお薬(分子標的薬)で出やすい症状です。

② 重症度のちがいと症状の変化
手足症候群の重さは「グレード(段階)」で分けて考えます。グレード1が一番軽く、グレード3が一番重い状態です。お医者さんは世界共通のルールに基づいて判断します。グレードが上がるほど生活への影響が大きくなり、お薬の量を減らしたり、いったん治療を止めたりすることがあります。
| グレード | 状態 | 日常生活への影響 | 対応の目安 |
|---|---|---|---|
| グレード1(軽い) | 軽いしびれ・赤み・むくみ。痛みなし。 | ほぼ支障なし | 保湿など毎日のケアを続ける |
| グレード2(中くらい) | 痛みを伴う皮膚の変化・水ぶくれ。 | 日常の動作に一部支障 | お医者さんに相談・お薬の量を調整 |
| グレード3(重い) | 激しい痛み、皮膚がむける。 | 日常生活がとても困難 | 治療をいったんお休み・専門ケア |
💡 ポイント グレード2以上になると、治療の減量・中止が必要になることがあります。「たかが皮膚の問題」と軽く考えず、変化に気づいたら早めに医療者へ伝えましょう。
③ どのお薬で起こりやすい?
手足症候群を起こしやすいお薬は、大きく2つのグループに分かれます。ひとつは「がん細胞が増えるのをじゃまするお薬(抗がん剤)」、もうひとつは「がん細胞だけのスイッチをねらって切るお薬(分子標的薬)」です。どちらも飲み薬が多いです。
がん細胞が増えるのをじゃまするお薬(抗がん剤グループ)
乳がん・大腸がん・胃がんなどに広く使われるグループです。カペシタビン(商品名:ゼローダ®)は特に手足症候群が出やすく、治療を始めてから数週間以内に症状が出てくることが多いです。
| お薬の名前 | 商品名 | 飲み方 | 手足症候群の出やすさ | 主に使うがんの種類 |
|---|---|---|---|---|
| カペシタビン | ゼローダ® | 飲み薬 | 出やすい | 乳がん・大腸がん・胃がん |
| テガフール・ウラシル | UFT® | 飲み薬 | ときどき出る | 大腸がん・胃がん・肺がん |
| フルオロウラシル(5-FU) | ー | 点滴 | 長く使うほど出やすい | 大腸がん・胃がん・膵臓のがん |
| S-1(エスワン) | ティーエスワン® | 飲み薬 | ときどき出る | 胃がん・大腸がん・膵臓のがん |
がん細胞だけのスイッチをねらうお薬(分子標的薬グループ)
肝臓のがんや腎臓のがんなどに使われるグループです。ソラフェニブ(商品名:ネクサバール®)やレゴラフェニブ(商品名:スチバーガ®)は、手足症候群がとても出やすいお薬として知られています。
| お薬の名前 | 商品名 | 飲み方 | 手足症候群の出やすさ | 主に使うがんの種類 |
|---|---|---|---|---|
| ソラフェニブ | ネクサバール® | 飲み薬 | とても出やすい | 肝臓・腎臓・甲状腺のがん |
| スニチニブ | スーテント® | 飲み薬 | 出やすい | 腎臓のがん・消化管のがん |
| レゴラフェニブ | スチバーガ® | 飲み薬 | とても出やすい | 大腸がん・消化管のがん・肝臓のがん |
| カボザンチニブ | カボメティクス® | 飲み薬 | 出やすい | 腎臓のがん・肝臓のがん |
📊 どのくらいの人に出るの?(研究データより) カペシタビンを使った人の約半数(45〜60%)に手足症候群が出ると報告されています。そのうち歩くのも大変なほど重くなる人は約10〜17%です。ソラフェニブでは約3〜4人に1人、レゴラフェニブでは約2人に1人に出るとされています。
📖 参考文献:Cassidy J, et al. J Clin Oncol. 2002 / Escudier B, et al. Lancet. 2007 / Grothey A, et al. Lancet. 2013
④ なぜ手足だけに起こるの?お薬の働きをやさしく解説
お薬の種類によって、手足症候群が起こる理由が少し違います。「がん細胞が増えるのをじゃまするお薬」と「がん細胞のスイッチを切るお薬」、それぞれの仕組みを簡単に説明します。
A. カペシタビン(ゼローダ®)などのお薬の場合
カペシタビンは、飲んだときはまだ「眠っている状態」のお薬です。体の中に入ってから少しずつ変化して、最終的に「がん細胞を攻撃する成分」に変わります。その変化が特に手のひら・足の裏で起きやすいため、その部分だけが傷つきやすくなってしまうのです。
仕組みをステップで見てみましょう
ステップ1 カペシタビンを飲むと、最初はまだ「眠った状態(効かない状態)」のお薬です。お腹や肝臓を通る間に少しずつ変化していきます。
ステップ2 最後に「がん細胞を攻撃できる成分」に変える「変換装置(こうそ)」が、手のひら・足の裏の皮膚にとくにたくさんあります。これが手足症候群の一番の原因です。
ステップ3 手足の皮膚でたくさんの攻撃成分がつくられると、皮膚の細胞が新しく生まれ変われなくなり、だんだん炎症やダメージが重なっていきます。
ステップ4 また、汗と一緒に攻撃成分が皮膚の表面に出てきて直接ふれることも、症状を起こす原因のひとつと考えられています。
🧪 もっとかんたんに言うと… カペシタビンは「飲んだあとに体の中で目を覚ますお薬」です。手足の皮膚には「お薬を目覚めさせる装置」がとくにたくさんある。だから手足だけが特別ダメージを受けやすいのです。ひとことで言うと、「手足がお薬の変換工場になってしまう」イメージです。

B. ソラフェニブ・スニチニブなど(スイッチを切るお薬)の場合
このグループのお薬は「がん細胞が増えるためのスイッチ」をオフにする働きをします。ところが同じスイッチが、皮膚の血管にも付いているため、血管も弱くなってしまいます。毎日たくさん動く手足には小さな傷が絶えず生まれますが、血管が弱いとその傷がうまく治らず、どんどん悪化してしまうのです。
仕組みをステップで見てみましょう
ステップ1 ソラフェニブなどは「がん細胞が増えるためのスイッチ」を複数まとめてオフにするお薬です。
ステップ2 スイッチをオフにすると血管を新しく作る働きも止まります。これがメインのがんへの効果ですが、皮膚の細い血管も同時に弱くなってしまいます。
ステップ3 手足は歩いたり物を持ったりして毎日たくさん使います。小さな傷が次々と生まれますが、血管が弱いとうまく治らず、皮膚が固くなったり、亀裂が入ったりします。
ステップ4 皮膚の傷を修復する「もとになる細胞」の働きも弱くなるため、傷の治りがとても遅くなります。
🧪 もっとかんたんに言うと… このお薬は「がん細胞の電源スイッチを切る薬」です。でも皮膚の血管にも同じスイッチがある。血管が弱くなった状態で毎日手足を使うと、小さな傷が治らないまま積み重なり、固い皮膚やひび割れになります。ひとことで言うと、「皮膚の修復工場が止まってしまう」イメージです。
📖 参考文献:Robert C, et al. Lancet Oncol. 2012 / Lacouture ME, et al. Oncologist. 2008
⑤ 対処法と予防ケア
手足症候群は、正しいケアをすれば重くなるのを防ぐことができます。大切なのは「早めに気づいて、早めに動くこと」です。特に、治療が始まる前からケアを始めることが最もよいと、多くの研究で報告されています。

🧴 スキンケア(毎日の習慣)
毎日のうるおいケアが、手足症候群を防ぐ一番のポイントです。特に、お風呂のあとすぐに保湿クリームを塗ることで、皮膚をしっとり守ることができます。
💧 保湿クリームを毎日塗る⇒ お風呂のあとなるべく早く手足全体に塗ります。薬局で買えるもので十分です。うるおいを逃がさないことが最大のポイントです。
🌡️ お風呂はぬるめのお湯(38〜40℃)で 熱いお湯は皮膚のうるおいを奪ってしまいます。長湯もあまりよくありません。
🧼 洗うときは泡でやさしく⇒ 刺激の強いナイロンタオルや硬いブラシは使わないでください。手で洗うか、やわらかいスポンジを使いましょう。
🩴 クッションのある靴を選ぶ ⇒ヒールや固い靴底は皮膚をこすって傷めます。スニーカーや厚底のサンダルがおすすめです。靴下も必ず着用しましょう。
🧤 家事や料理のときは手袋を ⇒洗剤・熱・こすれから皮膚を守ります。
🍽️ 生活習慣
日常の動作や環境も皮膚の状態に大きく影響します。小さな工夫の積み重ねが重症化を防ぎます。
🚶 長時間の歩行・立ち仕事を避ける 足の裏への負担を減らすことが大切です。通院のときも、できるだけ座って待てる環境を整えましょう。
🌞 強い日差しや暑い場所を避ける 熱は炎症を悪化させます。夏場のアスファルトの上は特に注意が必要です。
✂️ タコや固くなった皮膚を自分で取らない 固くなった部分はむしろ皮膚を守っています。気になる場合はお医者さんや看護師さん、フットケアの専門家に相談しましょう。
💊 症状の重さ別の対応方法
症状の重さ(グレード)によって、お医者さんの対応が変わります。グレード2以上になると、ぬり薬を処方してもらったり、お薬の量を調整したりすることがあります。心配なことはすぐに担当の医師・薬剤師に伝えてください。
| 症状の重さ | お医者さんの対応 |
|---|---|
| グレード1(軽い) | 保湿などのスキンケアをしっかり続けます。お薬の量はそのままのことが多いです。 |
| グレード2(中くらい) | 炎症をおさえるぬり薬(ステロイドのクリームなど)を処方してもらいます。必要ならお薬の量を減らします。 |
| グレード3(重い) | いったん治療をお休みします。痛みどめのお薬を使ったり、ばい菌が入っている場合は抗菌薬を使ったりします。 |
🌟 治療が始まる前からケアを始めるのがいちばん効果的! 世界の研究によると、治療が始まる1〜2週間前から保湿クリームをこまめに塗り始めることで、手足症候群の発症や重症化をかなり防げると報告されています。「症状が出てから始める」より「出る前から始める」ほうが断然よいのです。
📖 参考文献:McLellan B, et al. Support Care Cancer. 2015 / Cremolini C, et al. ESMO Open. 2023
⑥ こんな症状が出たらすぐに受診・連絡を
手足症候群はしっかりケアすれば回復できますが、放っておくと皮膚にばい菌が入って、もっと大変なことになる場合があります。次のような症状が出たときは、次の受診日を待たずに、その日のうちに病院や診療所に連絡しましょう。「がまんすればよくなる」は危険です。
⚠️ こんな症状が出たら、その日のうちに病院へ連絡してください
- 皮膚がむけて、じゅくじゅく・ぐちゅぐちゅしている
- 痛くて歩けない、または物をつかめないほど痛い
- 患部(手足)が熱くなって、うみ(白や黄色の液体)が出ている
- 38℃以上の熱が出て、同時に手足の症状もある
- 昨日よりも明らかに悪くなっている感じがする
⑦ まとめ
手足症候群は「がんの治療がしっかり効いているサイン」でもあります。でも、痛みをがまんし続ける必要はまったくありません。お医者さん・薬剤師さん・看護師さんなど、チーム全員で一緒に対応できます。「なんかおかしいな」と思ったら、ひとりで抱え込まずにすぐに相談してください。それが治療を最後まで続けるための、いちばん大切なことです。
| まとめ項目 | ポイント |
|---|---|
| 手足症候群とは | 手のひら・足の裏が赤くなったり痛くなったりする、がん治療のお薬の副作用 |
| 出やすいお薬 | カペシタビン(ゼローダ®)・ソラフェニブ(ネクサバール®)・レゴラフェニブ・スニチニブ など |
| なぜ起こる? | 抗がん剤:手足でお薬が活性化しやすい/分子標的薬:血管が弱くなり傷が治りにくい |
| ケアの3つのポイント | ①治療前から保湿を始める ②こすれ・圧力・熱を手足に与えない ③悪化したら早めに相談 |
📣 最後に ひとりで悩まないでください。気になることがあったら、いつでもお医者さん・薬剤師さん・がん専門の看護師さんに声をかけてください。チーム全員であなたをサポートします。
本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療の指示を行うものではありません。 受診・お薬に関するご不明点は、担当医・薬剤師にご相談ください。
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